オセロニア「論」

思考や情報の整理のために書いていきます。

ツクヨミ-フェイルノート環境の成立と今後の展望について ~②本質的な問題点~

前回の記事に続いて、シーズン終わりに話題を提供しているツクヨミデッキとフェイルノートについて書いていきます。

othellonia-ron.hatenablog.com

運営の提示した対応策

断トツの勝率と使用率で我が世を謳歌していたS5ツクヨミデッキですが、3月26日に

ゲーム内ニュースとプロデューサーによるアナウンス動画によって、4月以降に適用される以下の2点の規制に関する発表がなされました。

ツクヨミ-フェイルノート同デッキ制限

シーズンマッチに限り、4月1日から闘化ツクヨミと進化フェイルノートの同デッキ制限が適用されます。

この対応を求める声、私の知る限り年末頃には既に挙がっており、2024 1st SEASON開幕で適用されてもおかしくはないかなと思っていましたが、「シーズンマッチは調整控えめにし、保有する駒資産を活かす」方向性が提示され、一旦この時点では見送られました。

2024年の幕開けに調整の方向性が示された

 

この配信で感想を求められた高梨さん(元オセロ世界チャンピオン)も「期待していたほどの調整があったわけではない」「例えばツクヨミ・フェイルノートとかヨアケとか、ちょっと調整がほしかったという部分もあった」と正直に述べられており、当時から要望が存在していたことを裏付けています。

そこから4ヶ月での同デッキ制限適用ということで、想定以上にユーザの声が大きく寄せられていたのではというのが容易に想像できます。

※ ちなみに、高梨さんの感想を受けて、プロデューサーのけいじぇい氏も「軌道修正自体は柔軟にやっていきたい」と述べていますので、「シーズン開幕時に示した方向性をこんなに早く変えてけしからん!」という批判についてはやや厳しいのではと個人的には思います。

個人的には、1月の調整見送りと同時に追加されたスゥという駒の影響が大きかったのではと思いますね。あの駒の追加により、ツクヨミデッキ(含む神デッキ全般)は、ペトラ・スゥという1ターン完結で約4500ダメージを押し付ける大火力駒を2枚持つことができ、一段と破壊力を増したS5のゴリ押しムーブが可能になった感があります。

何はともあれツクヨミデッキは、昨シーズンのヒュプノスデッキと同様、フェイルノートを編成した構成が禁止されることが決まりました。

・S5枚以上デッキの制限(暫定的)

私の観測範囲ではこちらの方が大きな波紋を呼んでいるような気がします。

4月のチャンピオンシップ開催を見越して、ダイヤモンドクラス以上を対象に4/1~4/30の1ヶ月間、1デッキのS駒編成枚数を4枚までに制限したルールを試験運用するというものです。

議論を呼んでいる理由としては、S駒の編成枚数制限というデッキ構築の根本に関わる大きめのルール変更であること、シーズンの区切りでなくチャンピオンシップ開催直前に突如変更というタイミングについて、B駒の存在意義に関して、周年ガチャなど優秀なB駒狙いで課金したのですが!!!という声などなど、ツクヨミデッキのみに限らず様々な事情が絡む制限だからです。

確かにS5採用には、ツクヨミやアマテルなどの最新神デッキが高性能S駒パワーでゴリ押しする、という文脈の他にも、毒デッキや回復耐久といったややマイナーで環境の一線級とまでは言えないデッキにもしばしば見られており、これらのデッキは単にツクヨミの煽りを食う形になってしまうわけです。

まあ、この制限については賛否両論ありますが、現時点ではあくまで試験運用とされていて、4月のデータを参考に次シーズンの方針を決めるということなので(同デッキ制限とS枚数制限という2つの変数をいっぺんに変えてしまって、果たして有益なデータが取れるのかという疑問はありますが)、個人的にはまあどうなるか見てみようという姿勢ではあります。

問題の本質は属性ごと、レアリティごとのバランスが崩れていること

さて、このツクヨミデッキ強すぎ問題、ツクヨミ-フェイルノート同デッキ制限やレアリティ枚数制限で解決、という単純な問題ではないのでは、もっと根本的な問題が潜んでいるのでは、というのが私の現時点での見立てです。

以下、順に説明していきます。

・同デッキ制限はその場しのぎ

まず前提として、ツクヨミもフェイルノートも強く、さらに矢筒の召喚とオーダーC達成の間に大きな相乗効果があることは確かです。ですので、同デッキ制限は理解できる対応だと思っています。

その前提に立った上で、じゃあそれで全てが解決かというとそう簡単にはいかず、今後フェイルノートが搭載できる高性能神リーダー駒が登場する度に同じ問題が発生するのは明らかだと言えます。

なぜならば、それはこれまでも起きてきた問題だからです。

ヒュプノス-フェイルノートの禁止(2023年9月~)

 

記憶に新しい2023年9月、ヒュプノスとフェイルノートに同デッキ制限が適用されました。

この措置により、その先月まで神殴り、ヨアケ閃撃、ヒュプノスと三すくみを構成していた(神殴り→ヨアケ、ヨアケ→ヒュプノスヒュプノス→神殴りにそれぞれ強かった)環境が一変し、ヒュプノス(とヨアケ)が大幅に減りました。

当時、復帰して半年ほどだった私は、駒資産もそこまで充実しておらず、編成難易度が低くて強いヒュプノスデッキを中心に、HP&ATKプラスフェアリーを投入して強化していましたので、この同デッキ制限に伴う弱体化は悲しいものがありました。

そして、それと時を同じくして登場したツクヨミデッキがフェイルノートの新しい主戦場となり、また暴れに暴れた挙げ句、その半年後にそのツクヨミデッキからも締め出しを喰らってしまった、というわけですね。

そう、歴史は繰り返すのです。

じゃあ、あまりに強すぎるフェイルノートをナーフすれば良いのでは?となるのが自然ですよね。でも、そう単純にはいかないのです。

・フェイルノートは既に1度ナーフ済み!

この進化フェイルノートという駒、既に一度、登場時に(しかも即日!)ナーフを喰らっている身なのです。

これは私が復帰する前に起こった事案なので、リアルタイムでは目撃していないのですが、当時の出来事を後世に伝える様々な証言によれば、即日ナーフのお詫びとして超駒パレードに投入した星のかけら全額補填と詫び石14個の配布が行われたとか。

運営側からしてみれば、この駒は登場時の性能調整にかなりの勢いで失敗しており、その結果としてリリース後の弱体化&大規模なお詫び補填という手痛い仕打ちを既に一度受けているので、再度のナーフというのは消費者庁とか色々と絡んできそうでやりにくい(実質不可能)のだと思われます。

この進化フェイルノート(闘化の方もたいがいな壊れ方していますがw)の存在は、運営さんにとって常に頭の痛い問題になっているのではと想像できます。

議論の余地が多いフェイルノー

・神のつよつよS駒の人気は高い

フェイルノートをナーフできないなら、高性能な最新の神デッキリーダーを登場させなければよい、というのも手です。

しかし、個人的な印象を多分に含むのですが、神属性にはすでに汎用性が高く超パワフルなS駒(例えばトゥールラ、ペトラ、スゥ、キンマモン…)が多く、それらを共存させられる神デッキというのはかなり需要がある、すなわち収益に繋がりやすいという推測が立ちます。

今、環境はフェイルノートをはじめとするこれらの高性能神駒の共存が可能なツクヨミを失ったことで、多くのユーザーが新たな神リーダーを待ち望んでいるというのは想像に難くないです。

現に、4月のシーズンマッチが開幕すると、それほど見なくなっていたディートリヒ天楔が使用率トップ5に入っていたり、2022年9月登場のマルドゥークに一部で注目が集まるという現象も起きるなど、フェイルノートの新たな移住先を探す動きが確実に起きていました。

したがって、ツクヨミに同デッキ制限を課して間もないながら、2024 2nd SEASON開幕を告げる5月の超駒パレードで、御三家としてフェイルノートと共存可能な新たな神リーダーが登場しても私は特に驚きません。

なぜならば、ヒュプノス制限後のツクヨミ登場がそうだったからです。

・S5環境を変えるにはA駒を底上げすること

また、フェイルノートと併せて暫定的な調整の対象になったS5以上の編成について。

そもそも何故S5構成がここ最近ここまでメジャーになっているのかというと、S駒のパワーが上がっている・選択肢が増えていることに加えて、優秀なB駒が増えていることが理由として大きいのだと考えています。

その両レアリティの充実、インフレの速度に対して、デッキのベースたるA駒の底上げ速度が追いついていないことによって、A駒を減らしてB駒を2枚編成してもデッキとしての粗が目立ちにくく、S駒を多く引けるメリットがデメリットを上回っているのだと思います。

7周年エアレー(2023年1月)

7周年ゴブリン(2023年1月)

8周年幼猫(2024年1月)

温泉アルネ(2019年(!)5月)

これらはS5構成で良く使われているB駒ですが、条件が整えばA駒にも匹敵しうる1200~1500の出力を得ることができる優秀さです。

温泉アルネに至っては、初手でオーラ駒等を運良く呪うことができれば、呪われた駒を相手が保持し続ける限り、8ターンで7200ものダメージ(HP30000想定)を与えることができるので、働きとしてはもはや超駒S駒リーダー並(!)です。

このように、時にはA駒並かそれ以上の働きをし得る優秀なB駒の存在によって、多くのユーザーがS5構成を選択しやすい環境になっていることは明らかです。

つまり、HPがやや低くなることや終盤にB駒を引くことによる手駒事故のリスクを許容してでも、メリットがデメリットを上回っている、ということです。

S駒の超高HPが引っ張ってくれることもあり、S5B2構成にしてもHP低下はほぼ目立たなかった

 

したがって、もし今回のように頭ごなしにS5構成を規制することが議論を呼ぶのであれば、その代案として、S5構成が自然と下火になるようレアリティ間の駒パワーの歪みを調整していくことが望ましいと思います。

具体的には、B駒やS駒に比べたA駒の相対的なパワーを断続的に底上げしていくというのが有効なのではと思います。

とはいえ、広範に渡るデッキのA駒の性能を全体的に底上げしていくのは地道な作業であり、多大な時間がかかる上に、S駒に比べて注目度・入手困難度ともに高くなくユーザからの課金も集めにくいことが想像されるので、実行に移すのは簡単な作業ではなさそうです。でも、着実に実行する必要がある作業だと考えています。

・神デッキ以外の強化も喫緊の課題

上で書いたレアリティごとのパワー関係の歪みの他に、現状では属性ごとのデッキパワーにも差があるように感じます。

何を以てデッキパワーと言うか、には人それぞれの感じ方があると思うので、あくまで個人の主観になるのですが、私には神(単)デッキが火力と耐久力のバランスで他属性より一歩抜きん出ている印象があります。

※ あとはヨアケも火力・耐久力ともに高いですが、あちらは閃気の溜まり具合で大火力が飛んでくるタイミングがある程度予見でき、また時間もかかりますので、ダメージレースの駆け引きやスピード的には突然ペトラからのスゥが可能な神デッキに分があると思っています。

元々HPが高く設定されていた神デッキですが、最近はHP・火力ともに優秀な神S駒(これらはHPが2800後半から2900ほどもあり、それでいて4500~5000を超えるアドを取ってきます)がさらに増加しています。

また神10・神単条件のA駒の強化も進んだこともあり、先月まで存在したS5構成のツクヨミや神殴りなどは、多少神が不利なぐらいの補正では問題なく使われて勝っているぐらいには強かったですよね。

それに対して、例えば主流の魔単デッキであるメルヴェユールやアナンデッキでは、HPはせいぜい27000台であり、しばしば32000に迫る神デッキ、神単デッキに対して、勝負の前から何もしなくとも4000~5000もの不利を背負っていることになります。

神単に対して魔単は最初から4000~5000ものディスアドバンテージを背負っている

かと言って火力が神デッキよりも高く設定されているかと言うとそれほど顕著な差はなく、真っ向勝負を挑むとそのままHPの差で押し切られてしまうケースが多い印象を抱いています。

魔デッキならではの罠や魔紋・奪紋、コンボ封印、吸収スキルによるリーサルずらし等が上手く噛み合ってようやく勝てる、そういう試合を多く経験しました。

村正みたいな優秀なS駒がいるじゃないか、と言われるとそれはある面ではそうなのですが、村正にしてもバリアを2ターン打ち切ってやっとHPが+4800されるので、HP27000の魔単デッキが32000弱のHPを得ることに相当しますが、それでようやく神単のHPと並ぶことができたことになります。

魔単最高クラスのS超駒を2ターン打ち切ってスタート地点に立てる、ではあまりに不憫ですよね。

神単や神10以上デッキで使える神A駒は昨年めきめきと強化され(前回記事参照)、それまでやや火力不足感だったり、特殊ダメージ中心という不便さだったりを感じていたところ、雷撃中心で時に2000を超えるダメージを安定して叩き出すことができるようになってきています。これらのA駒群の追加により、明らかに神デッキが一回り以上強くなった感がありました。

同じような、火力・HP両面での底上げが魔(単)デッキにも起きる必要があるのでは?と筆者は考えています。

※ 追記:本記事をちまちまと執筆していた最中の4月10日に、魔単を強化するSuperEvil Deck Drive ~魔の深淵編~のガチャイベントが来ました。


これに登場した魔単デッキ用のA駒たちはどれもおしなべてステータス、スキルともに優秀な駒ばかりであり、運営さんは上記の魔(単)デッキのA駒群の底上げを課題としてきちんと認識して対応を打ってきたなと感じています。

昨年11月と12月の強駒パレードで追加されたツェツィと天音も、同じくこれまでと一線を画するステータスとスキル値を備えており、また、最新S超駒のフェルグやエリスなどでHPが2400台に乗ってきていることも踏まえると、オセロニア運営サイドは魔デッキの底上げに徐々に着手し始めているのだと私は感じています。